服飾の仕事に携わるKさんは、最初 知人の紹介で訪れました。1年半程前に胃癌の手術で、胃の2/3を摘出されています。元々細身の体型でしたが、術後 体重は更に減り続け、還暦の頃と比べて11kgも減ったそうです。
Kさんの場合は主に、漢方の脾(ひ)→ 胃腸と免疫系の立て直しに重点を置きました。約10か月間、参苓白朮散
や 晶三仙などの漢方薬の服用頂き、それと並行して漢方の食養生を実践頂きました。
ご本人の話では体重が落ちるのを気にし、以前は肉でも卵でも「とにかく食べなきゃ」と一生懸命だったようです。しかし食べる割には身に付かず、食事の後半は眠くてだるい、また便通はいつも不快な状況でした。合わない食事と食べ過ぎが、弱ったお腹に益々負荷を強いていたようです。
漢方的には、食事量や内容もさることながら、まずは栄養を受け入れる土台作り( 胃腸の立て直し )が重要です。消化と吸収力を増す漢方薬を中心に、Kさんの回復をサポートさせて頂きました。また食養生の中では「野菜中心の和食を、腹八分」を原則とし、地道に実践頂きました。
飽食の現代、肥満を気にする人は多数おりますが、逆にご病気や体質等で、太りたくても太れない悩みの方も少なくありません。
Kさんが漢方を開始し2~3ヵ月、ようやく 体重減少に歯止めがかかりました。その後も、 こつこつ続け、もうすぐ1年になる現在では血色もだいぶ回復し、当初より4kg程、ふっくらと肥えて参りました。
「近頃、風邪もひかなくなったわ~♫」うれしそうなKさん。
「快食、快便、快眠」が、健康の3要素と言われますが、その内2つも胃腸の事柄が含まれています。近年、腸管免疫という言葉をよく耳にしますが、漢方の脾(胃腸)の大切さを改めて気付かされた一例です。